2024年からNISAが新しくなるのと共に、ジュニアNISAがなくなってしまいます。
そこで、今年のうちにジュニアNISAを始めておこう!と思っている人は多いのではないでしょうか。
それ、ちょっと待ってください。
あなたが今始めるべきは本当にジュニアNISAであってますか?
まずはジュニアNISAの制度内容の確認からしていきましょう。
・ジュニアNISAをやろうか迷っている人
・子どももための貯蓄に興味がある人
・ジュニアNISAの細かい手続きが気になる人
ジュニアNISAの概要
ジュニアNISAとは0歳〜18歳の子ども名義で行う非課税投資枠のことです。
言わずもがなですが、投資した額が非課税となるわけではなく、投資して増えた部分への課税(20.315%)がなされない制度です。
年間80万円まで、一括でも積立でも利用が可能で、非課税期間は5年間となっています。
子どものお金で行う運用
制度の概要だけ聞くと使っても損はないかと思えますが、実際にジュニアNISAを始めようとした時にいくつか弊害が出てきます。
その最大の問題点が『子ども名義の運用』であること。
言い換えると『親や祖父母のお金で行う運用ではない』ということになります。
金融庁のHP(Q&A)に『ジュニアNISA口座を開設する際、法定代理人や運用管理者から「口座開設者本人に帰属する資金以外の資金によってジュニアNISA口座で投資が行われないこと」を証する書類の提出を求めることとされている』と、あるように、あくまで子の資産を使っての運用に限られるというわけです。
親や祖父母のお金をジュニアNISAの元手にするためには贈与というステップを踏まないといけないので気をつける必要があります。
また、贈与したお金をジュニアNISAで運用し、その資金を解約(利益確定)した後にそのお金をまた親や祖父母が生活費等に利用することも本来できません。
そのほか、親や祖父母などから相続したお金や日頃もらっているお小遣いやお年玉などは子の資産となるため利用可能です。
制度の制限がゆるくなった
2024年から新規でジュニアNISAを始めることができなくなりますが、既にジュニアNISAを利用している人は子供が18歳になるまでは2023年までに投資した分は引き続き保有が可能です。
保有は可能ですが2024年以降の制度利用に改訂があります。
①非課税期間は5年ですが、2024年以降は非課税期間の5年を終えた後も18歳までは非課税で保有し続けられるようになります。(継続管理勘定)
今までは非課税期間の5年が経過した後は、ロールオーバーすることで非課税期間を伸ばすことができまました。
つまり2022年で5年経過し、非課税期間が終了する場合その分を2023年の枠に移すことでさらに5年間非課税で保有できるということです。
ですが2024年以降は枠自体がなくなりますので、ロールオーバーはできませんんが「継続管理勘定」へ移管ができるのでそのまま18歳まで非課税で保有できるわけです。
引き出しの制限がなくなるので急な入り用があった時でも安心ですね。
ですが一つ注意点があります。
一部資金での引き出しはできない(一括引き出しのみ)ということです。
18歳よりも前に引き出しをしようとすると全額を一括で引き出すことになり、そのままジュニアNISAの利用は終了となります。
今から急いで始めたものの数年で引きだしが必要になってそのまま終わり、なんてことがあったらちょっともったいないですね。
いつでも引き出せるというのは安心なポイントですが、その選択は慎重に考えましょう。
今から始めるデメリット
親権者が主体
未成年のための制度ですが、もちろん未成年単体では手続きができません。
ある程度年齢が上がったとしても18歳に到達するまでは、全ての手続きを法定代理人(運用管理者)が行う必要があります。逆に未成年者本人は何もしなくても申し込みできます。
金融機関によって多少の違いがある場合がありますが口座開設の際には、子のマイナンバー、印鑑、本人確認書類に加え、親権者ごとの本人確認書類や印鑑、親子関係を証明するもの(世帯住民票や戸籍謄本)が必要になるのが一般的です。
また、子が片親でなく両親がいる場合にはそれぞれ用意が必要になりますし、どちらか一方の所存で申し込みするのはむずかしい可能性もあります。
口座開設だけでも現役勤労世帯である場合にはそれなりに時間と労力が必要となる手続きです。
親たち自身でまだNISAを利用していない場合などは、ジュニアNISAに時間を取られるよりも自分たちのNISAや貯蓄の手続きに時間を使うことを優先させたほうが合理的ではありますね。
成年到達後に本人による手続きが必要
ジュニアNISAは名義人の子が18歳(成年)になると、口座名義人である子ども本人が運用指図者となります。
その際、銀行や証券会社などでは口座名義人が成人となってから初めて取引を行うまでの間に、口座名義人本人の適合性の確認を行うこととされています。
逆に今まで運用指図者だった親が継続して運用を管理することは原則できなくなります。それを希望する際にはその旨を銀行や証券会社に届け出ることで可能になる場合もあります。
18歳になると子供が自分で取引を行うことになりますので家族の中でちゃんと引き継ぎできるかがポイントになってきます。
よくあるパターンが、18歳(高校3年生)になって受験真っ盛りで忙しい→そのまま大学へ進学、地方へ一人暮らしor上京して一人暮らし。こうなってくるとジュニアNISAもそのまま放置といった形になります。
ちなみに18歳である年の1月1日には成人用のNISA口座が自動的に開設されますので手続きは特段不要ですが、2024年以降、ジュニアNISAで運用していた資金は新NISAへロールオーバーできませんので注意です。
つまり、18歳になってからずっと放置しているとジュニアNISAで運用していたものは課税口座へ移され運用が継続しますが、同時に自動的に作られた新NISAは使われないまま放置される、ということです。
運用しないより課税口座ででもしているだけメリットはありますがちょっと勿体無いですよね。
ジュニアNISAという制度があってもなくても、運用を始める人は18歳から自分で始めますし、ジュニアNISAを持っていてもやらない人は18歳になっても自分ではやりません。
これだったら日頃から慣れている親が自身のNISAを最大限活用した方がメリットも大きいというわけです。
今から始めない方がいい理由まとめ
・今年1年だけ(80万円分)しか使えない制度なのに労力が見合っていない
・親自身の制度利用を見直すことに時間を割いた方が合理的
・80万円のためだけに適合性確認が必要とされる
・自動的に課税運用へ移行(手続きすれば売却して新NISAで買い直すことも可能)
・新NISA口座は成人したら自動的に作られるが使わなければそのまま
自分で使える制度を優先しよう
NISAは全額使っているか
ジュニアNISAの利用を検討する前にまず大前提として親がちゃんとNISAを活用しきれているか確認してください。
ジュニアNISAは親のNISAの二の次です。まだ親がNISA口座も作っていないのであれば早急に作りましょう。
NISAを既にやっているよという方は非課税限度額めいっぱい利用できていますか?一般NISAであれば年間120万円(積立での利用も可)、つみたてNISAなら年間40万円(月3万円ほど)ですが、枠を余らせることなく使い切れそうですか?
2024年からの新NISAは利用限度額が大幅にアップします。
来年以降もその限度額をしっかりと使っていけそうでしょうか?
そうでもないのにジュニアNISAに手を出してしまうのは性急すぎます。
手間と面倒な手続きを増やしてしまうことになりかねますので、まずは自分自身のNISA利用を最優先しましょう。
iDeCoの活用は検討したか
NISA、ジュニアNISAともに運用益が非課税になりますが、節税効果はありません。
所得税や住民税を減らせる制度としてはiDeCo(イデコ)があげられます。
iDeCoとは個人型確定拠出年金のことで運用しながらも税金対策ができる制度です。サラリーマンはもちろん自営業者や第3号被保険者である主婦なども加入ができますし、加入可能年齢も引き上げられ注目が高まってきています。
しかし、iDeCoで積み立てた資金は原則60歳まで引き出しが不可能なので、子どものための貯蓄としてはタイミングを異なってしまうかもしれません。
ですが貯蓄と節税の仕組みとしては、iDeCoをうまく活用することで子どものための貯蓄資金を捻出することにも繋がりますのでこの際に合わせて検討してみてはいかがでしょうか。
保険料控除を活用した税制効果
iDeCoの他に節税対策として選ばれているのが、保険へ加入することによる保険料控除の活用です。
これも保険として払い込んだ額に対して所得税や住民税を減らせる効果があります。
企業に勤めている方なんかは年末調整で書類を提出したこともあるかもしれませんが、対象の保険への払込額を申告することで翌年の1月ごろに税金の還付を受けることができます。
自営業者などは3月15日までの確定申告で払込保険料を申告すればいいわけです。
詳しくはこちらの記事で説明しています。
ジュニアNISAを利用すべき人
②2024年からの新NISAの限度額以上に運用にお金を回せる
③子ども名義のお金に余裕がある(名義預金は不可)
余計な手間をかけずに最適な投資手段を選びましょう
それぞれの資産の情況次第ではジュニアNISAを利用するメリットがある方と、利用してメリットはあるものの余計な手間が増えてしまい、結局自分の投資枠で済ませておけば面倒なことはなかった(メリットとしては同じだった)、といった方など様々です。
正しい情報を知り、自身や家庭に合った方法を選んで、余計な労力を使わないスマートな貯蓄を進めていきましょう。